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【弁護士の解説コラム】問題社員の放置は禁物!~モンスターになってしまうその前に

【弁護士の解説コラム】問題社員の放置は禁物!~モンスターになってしまうその前に

問題社員対応は遅くなればなるほど難しくなります

従業員が働いた分だけ給料が支払われる。このことは、雇用という関係が成り立つための大前提であり、経営者であっても従業員であっても、共通の認識となっているはずです。しかし、経営者と従業員とでは、何をもって「働いた」というのか、大きなズレが生じていることが少なくありません。

経営者のみなさまにおかれましては、「期待にかなった働き」があってはじめて「働いた」というのにふさわしいという思いを多かれ少なかれお持ちではないでしょうか。それゆえ、働きぶりが悪い従業員に対しては、支払っている給料に見合わないと感じたり、さらにはこのまま雇い続けること自体に消極的になることさえも大いにあり得ると思います。

では実際に、働きぶりが悪いことを理由にして給料を下げたり、場合によっては解雇したりすることも認められるのでしょうか。このどちらも実際には難しく、法律論争になってしまった場合には、雇い主側の言い分が通らないことが多いということは、皆さまもおおむねご存じのことと思います。しかし、ここにはいくつかの誤解があります。

たしかに、従業員の働きぶりが悪いからといって、給料を下げたり、まして解雇が易々と認められるということは、我が国の労働法制下においては考えにくいことです。しかし、その従業員を雇用しているからには、やってもらいたい仕事があるからであって、その仕事には当然、一定の水準というものがあるはずです。

また、仕事は一人でできるものばかりではりませんので、多かれ少なかれ、チームワークも尊重してもらわなければならないといえるでしょう。働きぶりが悪かったり、スタンドプレーが過ぎることは、雇用した趣旨、つまりは雇用契約がきちんと守られていないといえるのです。

契約がきちんと守られていない場合、相応の制裁を受け得ることは当然のことです。これは雇い主と従業員との関係でも同じことです。働きぶりが悪い従業員は、雇用契約に従って、相応の制裁の対象となるべき立場にあるといえます。もし、働きぶりが悪い従業員に対して、雇い主の判断で給料を下げたり、解雇することができるという契約があり、実際に働きぶりが悪い従業員が発生した場合には、これに基づいた対応をすることも本来は可能なのです。

しかし、我が国の法制度下においては、雇用契約の内容は労働基準法や労働契約法をはじめとする労働法に適ったものでなければなりません。雇い主のさじ加減一つで、従業員の給料が変動したり、解雇がなされるということは、労働法上、厳しく制限されていることから、結果的に働きぶりが悪い従業員に対する一足飛び的な対応ができなくなってしまうのです。

働きぶりの悪い従業員は、経営者において、給料に見合っていないという感情を抱かせるだけでなく、他の従業員からの不満の対象となり、職場環境を悪くしてしまう原因にもなりかねません。そもそも一口に働きぶりといっても、その内容は様々であり、一応、働いてはいるもののパフォーマンスが悪い者もあれば、遅刻・欠勤が多くて、そもそも十分に働いていないという者まで様々です。あるいは、仕事自体は相応にこなしているものの、協調性を欠いていたり、最悪、その態度がハラスメントにまで及んでいるという者もあり得ます。

経営者の立場からすると、この種の従業員は、働きぶりが悪いということを通り越して、完全に問題社員であるといえます。こうした問題社員に対しては、今すぐ、効果的な対応を講じたいとお思いのことでしょう。しかし、そこまで急ぎの対応が必要だと感じるまでに、その従業員の問題性は、色々と表れていたはずで、最初のころであれば、まだ言ってきかせる余地があったのではないでしょうか。まさにこれこそが、問題社員への対応を行うためでの重要なポイントとなります。

問題社員を抱えているということは、会社が病気をかかえているという状態に他なりません。今すぐ、効果的な対応が必要になっている状態は、病気がかなり深刻な段階にまで進んでいるということであり、そこで一足飛び的な対応を行うということは、今まで何の治療もしてこなかったのに、急に劇的な手術をするというようなもので、高いリスクを伴うのです。問題社員への対応は、早期発見・早期治療こそが肝心です。

問題社員の早期発見・早期治療とは

程度の差はあるものの、その従業員を採用した際には、「良い人材」だという判断があったからに違いありません。それが今や会社を悩ます問題社員となっているからには、どこかで「こんなはずではなかった」と思ったタイミングがあったはずです。問題社員への対応は、この最初のタイミングにどれだけ近いところで始めることができるかが、今後の命運を左右することになります。

雇って間がない時期での問題性が見つかった場合

採用後、3ヶ月から6ヶ月程度、試用期間が置かれる例がよくあります。この試用期間は、まさにミスマッチがないかどうかを判断するための期間ですから、「こんなはずではなかった」という事態に直面した際には、タイミングを失することなく、注意をして、改めるように指導をすることが重要です。

遅刻や欠勤が目立つ場合

時間を守ることは社会人としての最低限のたしなみですので、遅刻が目立つ従業員は、それ自体、問題行動であるといえます。欠勤についても、同様のことがいえますが、完全に仕事を休まなければならないからには、何らかの事情があり、場合によっては、心身に病気を抱えているのかもしれません。

遅刻や欠勤が目立つ従業員については、必ずその理由の説明を求めた上で、理由がないのであれば注意指導を確実に行い、心身の病気を抱えているようであれば、医師の診察を受けさせた上で、必要に応じて休職対応をすることも考えなければなりません。

職務怠慢な問題社員への対応解説ページはこちら

パフォーマンスが低い場合

経営者にとって、その従業員の働きぶりが悪いと感じる理由の大部分を占めるのは、業績をうまく上げられなかったり、能力自体が低いと見ざるを得ない実情がある場合だと思います。しかし、そういう従業員に限って、自分は精一杯頑張っていると主張するものです。あるいは本当に頑張っているものの、結果がついてこないということもあるかもしれません。パフォーマンスが低いということは、必ずしも経営者と従業員との共通認識になるわけではなく、双方の言い分が真正面から対立しやすい問題といえます。

もし、その従業員の能力不足を問題にしようというのであれば、従業員側からの反論の余地のない証拠を添えなければなりません。数字に見える成果はもちろんのこと、その従業員の能力の不足が、いかにして会社の業務に具体的な害悪を与えたのか、目に見える形で明らかにした上で、注意指導することが必要不可欠となります。

能力不足・パフォーマンスが低い問題社員対応のポイントはこちら

協調性が乏しい場合

仕事の面でもさることながら、最近では、職場内部での人間関係をうまく築くことができず、孤立をしたり、他の従業員に対して当たりが強かったり、さらにはハラスメントに及んでしまうという従業員も、経営者を悩ませる問題社員としてありがちです。こうした人間関係上の問題は、最初のうちは周りの者がうまく調整をして現場を円滑に回していくので、経営者が気づくころには、すでに事態が深刻化してしまっている、ということも少なくありません。

協調性が乏しい従業員の多くは、自分に問題があるのではなく、周りにいじめられているであるとか、嫌がらせを受けている、言いがかりをつけられているなどという主張をしがちです。ここでは経営者と従業員だけでなく、従業員同士でも言い分が違ってくるので、やはり協調性が乏しいと目される従業員に反論の余地のない証拠を添える必要があります。ここではその従業員の問題性そのものに着目しがちですが、そういう方法では、言った言わないであるとか、価値観の水掛け論になりかねません。ここでもその従業員のどういった言動が、会社の業務に具体的な害悪を与えていることを目に見える形で明らかにして、注意指導するという考え方を持つことが重要です。

モンスター化した問題社員への対応こそ忍耐が必要

その従業員が問題社員であることは、雇用主の皆さまにとっては、毎日の経験として、間違いのない事実であり、他の従業員も同じような感覚を持っていることだろうと思います。しかし、当の問題社員自身は、自分が悪いとは全く思っていないことがほとんどであり、もし一足飛びに解雇するというような対応をした場合には、高い確率で「不当解雇をされた」という争いに発展してしまいます。

たとえ不当解雇だと争われたとしても、その従業員が問題社員であることは間違いない事実だから、裁判になったとしても、正々堂々と戦えば良いと思われるかもしれません。その考え方自体は全く正しいことです。しかし、裁判所は良きにつけ悪しきにつけ、中立です。その従業員が問題社員であることが間違いないと「証明」できなければ、解雇の正当性を裁判所にわかってもらうことができません。そのためには、その従業員が、いつどこでどのような問題行動に出てその結果、会社にどういう具体的な害悪が生じたか「証拠」を示さなければならないのです。

その上、仮にその従業員が問題社員であったことが証明できたとしても、解雇が正当と認められるためには、このタイミングで解雇をすることが社会通念上も相当と裁判所に納得させなければなりません。しかもこの「社会通念」とは、「裁判所が考える社会通念」であり、「労働法の理念が行き渡っていて、誰もがこれを守る社会の通念」であるということです。端的にいえば、我々が考える社会常識ではなく、裁判例の積み重ねによって確立された判断基準こそが「裁判所が考える社会通念」になってしまうということです。

裁判所が考える社会通念の下においては、問題社員であったとしても、注意指導を繰り返してもなお、改善する余地が見込まれないという事情があってはじめて、解雇が認められるということになりますそのため、これまで何の注意指導もしていなかった従業員を今すぐ解雇しようとすると、よほどのことがない限り、解雇無効となってしまうリスクが高いということになります。

モンスター化してしまって、手に負えなくなった問題社員を、今すぐ解雇したいと思われることは、極めてごもっともです。しかし、早い段階で注意指導を繰り返していれば、会社と従業員とのパワーバランスは会社側に傾きやすく、反対に問題行動はあるものの、それがそのまま放置されていると、問題社員の増長を招き、まさにモンスター化が進んでしまいます。それゆえ、現にモンスター化している問題社員がいるということは、これまでの注意指導が不十分であった可能性が高く、ここで一足飛びに解雇に及んでしまうと、かえって解雇無効の裁判を受けてしまい、本末転倒なこととなってしまいかねません。モンスター化した問題社員にこそ、直ちにかつ忍耐強く、注意指導を繰り返すことが必要不可欠です。

注意指導に関する解説ページはこちら

問題社員への対応には弁護士によるアドバイスが必要です

モンスター化してしまった問題社員を一足飛びに解雇しようとすると、かえって法的リスクが高いといえます。注意指導を繰り返した上で、必要に応じてより緩やかな懲戒処分を経てもなお、改善しなかったという実績を積み重ねなければなりません。

そうした対応を経て、問題社員側から自主的に退職をすると申し出てきた場合には、これを拒むという手はありません。これまでの問題行動の数々をふまえると、懲戒解雇でなければ気が済まない、と思われる方もあるかもしれませんが、懲戒処分は職場の秩序を守るために行うものであり、怒りをおさめるためにすべきものではないことに注意が必要です。

懲戒処分を行う際の注意点解説はこちら

注意指導やより緩やかな懲戒処分を経て、いよいよ解雇に及ぶかどうかという段階に至ったとしても、まだ解雇をすることは拙速です。解雇はあくまでも雇い主側からの一方的な通告であり、そもそも自分は悪くないと思いがちな問題社員からすると、納得がいかないと主張して、紛争リスクに発展する可能性が比較的高いといえるためです。それゆえ、まずはこれまでの注意指導等の履歴を確認した上で、会社としての考えを伝えた上で、その従業員も納得した上での退職が実現できないかという可能性を、いわゆる退職勧奨の方法にて探るべきです。

退職勧奨を行う際のポイントはこちら

問題社員がモンスター化する前に、早期発見・早期治療に着手するためには、経営者側の立場から労務に注力している弁護士から継続的なアドバイスを受けることができる体制を構築しておくことが有用です。当事務所では、地元京都を中心に多くの企業よりご用命を受けて、労務を中心とした法的アドバイスを提供させていただくためのリーガルサポートプランを用意しております。

リーガルサポートプランのご案内はこちら

すでにモンスター化してしまった問題社員への対応は、手順を誤ってしまうと、十分な証拠を伴うことができなかったり、過去の裁判例にそぐわない対応となってしまった結果、解雇が無効となって、多額の金銭的負担を強いられたり、さらにその従業員の増長を甘受しなければならないという不条理にも至りかねません。当事務所では、問題社員への対応にお困りの事業主の皆さまへの継続的なサポートプランも用意しておりますので、是非ともお問い合わせください。

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