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解雇や自己都合退職と退職金

退職金の支給は法律上の義務ではない

従業員との雇用契約は、働くことに対して給料を支払うということを本質としています。退職金は長い間働いてくれた従業員の功労に報いるという趣旨のほか、賃金の後払い的な性格を有しているといわれていますが、法律上、支払いが義務付けられている者ではありません。就業規則や退職金規程などで明記されたり、慣例上支払われることが確立されている場合など、退職金を支給することが雇用契約の内容となっていることが、退職金支給の要件となります。

退職金の支給が法律上の義務でない以上、退職金を全く支給しないということも認められています。しかし、正社員に退職金を支給する一方で、非正規従業員には一切の退職金を支給しないという区別を設けることには、慎重な対応が必要です。

正社員に非正規従業員よりも難しい内容のものや責任を伴う業務を担わせているという実情があり、正社員にのみ退職金を支給することは、こうした役割を担える人材に定着してもらうための目的によるものであると説明できる場合には、非正規従業員に退職金を支給しないことも、必ずしも不合理ではないとするのが判例の立場です(最判令和2年10月13日)。裏を返せば、仕事の内容も責任の程度も同じような正社員と非正規従業員との間で、退職金の支給について区別を設けることは、不合理であるとされる可能性があります。

退職金の減額

退職金には、相応の功労報酬的な性質があることから、貢献度に応じてその額を加減するという仕組みによることも認められています。そのため、定年退職まで勤め上げた場合と自己都合によって中途退職した場合とで支給額に区別を設けたり、懲戒解雇に退職することとなった場合にも制限を設けることにも、相応の合理的な理由があると考えられています。

自己都合退職時の退職金を減額するという規定に対して、ひとくくりに「会社都合退職」の場合には、退職金を満額支給するという規定がなされている例があります。たとえば整理解雇のように、従業員には何も問題がなく、文字どおり、会社の都合で退職をしてもらう場合には、退職金の減額について合理性は乏しいでしょう。

しかし、従業員に何らかの問題があって解雇する場合にも、満額支給せざるを得ないかというと疑問です。むしろ家庭の事情で自己都合退職せねばならない従業員との比較では、何らかの問題があって解雇される従業員の方こそ、退職金の額は減額されて然るべきといえます。このような不合理が生じないよう、退職金規程の定め方には注意が必要です。

とりわけ、懲戒解雇の場合には、最終的には会社との信頼関係を壊すことによって解雇されたことになるので、このような場合にまで、退職金を満額支給しなければならないのでは道理にあわないといえます。そのため、多くの場合、懲戒解雇の場合には、退職金の全部又は一部を支給しないという定めが置かれています。

しかし、退職金に功労報酬的な性質があることを考えると、長年積み重ねてきた貢献がある一方で、最後の最後で会社との信頼関係を壊すことになったとしても、はたして退職金の全部に対応する功労まで失われるといえるかは議論の余地があります。裁判例も、懲戒解雇の場合でも、退職金の全部が失われるのは、過去の功績を全部失わせるほどの懲戒事由があった場合に限られるとの前提で、一部についてはその支払いを命ずる傾向にあります。
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また、単に信頼関係の破壊にとどまらず、会社に対して具体的に損害を与えて懲戒解雇にされた従業員に対しては、会社は損害賠償請求権を有することになります。会社の立場からすれば、この損害賠償請求権と退職金請求権とを相殺したいところです。しかし、会社側から一方的にこのような相殺を行うことは認められないとするのが判例の立場です(最判昭和36年5月31日)。相殺は、会社から一方的に行うのではなく、従業員とよく話し合って、自由な意思での合意によって行うことが必要です(最判平成2年11月26日)。

従業員との退職金トラブル

退職金の支給については、雇用契約によって定められるので、退職金規程等のルールが明確に定まっている場合には、トラブルになるリスクは比較的低いといえます。しかし、このルール自体が曖昧であったり、実際の運用と離れているような場合には、解釈や運用をめぐってトラブルとなります。そのため、まずは退職金規程そのものに問題がないか、専門的な観点からの確認が必要不可欠です。

また退職金規程に明確な定めを置いていたとしても、懲戒解雇の場合が典型的であるように、退職金の全部を支給しないことが認められる場合は極めて制限的に解釈されており、損害賠償請求権との相殺に至っては、従業員が自由な意思で合意することが必要で、会社側から一方的に行うことは許されていません。

退職金はルールが明確に定まっている場合にはトラブルとなりにくいものの、その分、トラブルとなった場合には、裁判例上、会社側の対応に問題があるとされやすい傾向にあるといえます。明確で合理的なルール作りのためにも、紛争の早期解決のためにも、退職金トラブルについては、会社側の立場から労務問題に注力している当事務所へ是非ともご相談ください。

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