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3年目の残業代請求―消滅時効2年の時代はすでに終わっています!

残業代計算は労務管理の表裏

1日8時間・1週40時間・週休2日制という働き方は、現代日本社会の正社員に最も普及している方法といえます。これを超えて働いた場合、通常の時間を働いた場合に支払うこととなっている給料に対し、法律が定める割合を加算した割増賃金を追加して支払わなければなりません。これがいわゆる「残業代」と呼ばれるものです。

所定時間外労働 所定労働時間が8時間以下の職場での8時間以内の勤務分 1.00
法定時間外労働 1日8時間・1週40時間のいずれかを超えての勤務分 1.25
休日労働 週1回確保しなければならない休日(法定休日)の勤務分 1.35
深夜労働 午後10時から午前5時までの勤務分 1.25
法定時間外深夜労働 深夜勤務が法定時間外労働にもあたる場合 1.5
休日深夜労働 深夜労働が休日労働にもあたる場合 1.6

※法定時間外労働と深夜労働は1ヵ月あたり60時間を超えて行われた場合、さらに0.25の割合を加算した割増賃金を支払う必要があります(ただし、中小企業への適用は2023年4月まで適用が猶予されています)。

残業代を法律が求めるとおりに支払おうとすると、いつ、どの従業員が、どれだけ残業をしたかを漏れなく把握して、その残業の種類ごとに所定の割増率を当てはめて、残業代を計算しなければなりません。しかも、従業員ごとに通常の時間を働いた場合に支払うこととなっている給料の額はまちまちですから、残業代の計算のための基礎となる賃金単価も個別に管理しておく必要があります。

こうした作業を手作業で行うことはとても大変です。そのため、事務作業を効率化するために、どれだけ残業があろうと、毎月定額の給料を支払うことで、個別の計算を省略しようという方法が採られている例が少なくありません。いわゆる定額残業代や固定残業代といわれる仕組みです。

しかし、固定残業代の方法は、就業規則や雇用契約の根拠が曖昧であったり、実際の支払われ方が通常の時間を働いた場合に支払うこととなっている給料とハッキリと区別できていない場合など、残業代として支払ったということ自体、認めてもらえない場合があります。

しかも、固定残業代の金額が、法律どおりに計算した場合よりも少ない場合には、差額を追加して支払わなければなりません。そのため結局は、いつ、どの従業員が、どれだけ残業をしたかを漏れなく把握することは、固定残業代を採用した場合でも必要不可欠となるのです。会社にとって、事務作業を効率化させるという目的で固定残業代を導入するメリットは実際にはないといえます。2020年代では、労務管理を省略するのではなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進して、精密な労務管理を実現していくことこそ求められているといえます。

3年目の残業代請求

従業員は働いた分だけ会社に対して給料の支払いを求める権利を持っています。残業代の請求権も給料の支払いを求める権利の一つです。従来、会社に対する給料の請求権は、従業員が会社に対して支払いを請求することができる日、つまり給料日から2年で時効にかかるとされていました。

ところが、2020年4月1日に労働基準法が改正され、これ以降に働いた分に対応する給料については、消滅時効の期間が3年と改められました。しかもこれは、「当面の間」の措置であり、具体的な時期は定まっていないものの、そう遠くない時期には、給料の消滅時効の期間は、なんと5年にまで改められることとなっているのです。

残業が多いことは、それ自体、従業員のモチベーションを下げがちであり、離職の理由にもつながります。こうしたメンタルに陥った従業員は、在職中は何も言わないのに、ちょっとした行き違いで会社に対して不満を抱いたまま退職をして、それからまとまった額の未払残業代請求をしていくということがよくあります。

残業代の消滅時効期間は、裏を返せば、それだけの期間分のまとまった残業代請求が一気に行われるリスクがあるということを意味します。時効の期間が3年となった今、その請求額は3年分となり、近い将来は実に5年分にも及ぶこととなります。

それだけでなく、本来支払うべき時期は3年前、5年前に過ぎているということになるので、その分の利息にあたる遅延損害金の支払いも求められてしまいます。退職後の請求の場合、その利率はなんと14.6%になってしまいます(賃金の支払いの確保等に関する法律)。

残業代の請求を受けた場合には

この数年来、最高裁が残業代に関する重要な判断をいくつか示しており、会社としてはきちんと残業代を支払っているつもりでも、法律上は適正な支払いとは認められないという例が非常に多く出てくるようになりました。その結果、企業が多額の残業代支払を余儀なくされるという例が数多く出てきています。

  • 残業代を定額で支払っており、法律上の計算額との過不足は計算していない。
  • 就業規則や雇用契約の定めとは違う方法で残業代や給料を支払っている。
  • 残業が多い分は、賞与や昇給で考慮している。
  • 管理職だから残業代は支払っていない。
  • 様々な手当を付けており、それらの手当を残業代と兼ねている。

こういった方法は、実際の裁判で適正な残業代の支払いとして認められなかったことがあるケースです。会社として残業代を支払っていたつもりでも、裁判にまで発展して、結果的に適正な残業代の支払いと認められなかった場合には、最悪の場合、残業代の支払いは「一切なかった」と見なされることさえあります。そして、会社として残業代として支払っていたつもりの給料まで、いわゆる基本給に読み替えた上で、再度、法律上の計算に基づいて算出された残業代の支払いが命ぜられます。

それだけでなく、まとまった額の残業代の不払いがあったと裁判によって判断された場合には、支払いが命ぜられたのと同額程度の「付加金」という、一種の懲罰的な金銭の支払いもあわせて命ぜられることとなります。この場合、未払残業代が500万円あったとすると、付加金でさらに500万円の合計1000万円もの支払いが命ぜられ、その従業員がすでに退職していた際には、先に述べた14.6%の遅延損害金の支払いまで余儀なくされることになり、二重払いどころでは済まない大損失となってしまいます。

法律上の残業代の仕組みは複雑なので、従業員がいざ請求をしようと思っても、専門家の助言を得なければ、なかなかできるものではありません。逆に、請求がなされている以上は、何らかの形で専門家のサポートを受けている可能性が高いといえます。専門家がある程度の見通しを立てているのであれば、残業代が全く未払いになっていないという例は滅多にありません。従業員からの残業代請求には、会社側も専門的な観点から対応することが必要不可欠です。

当事務所は、会社側の立場から労働問題に取り組むことに注力しています。従業員が専門家を通じて残業代の請求をしてきた場合には、法律上、実際に何らかの未払いとなっている残業代があると考えざるを得ないことがほとんどですが、それでも実労働時間の集約方法や、休憩時間の取り扱い、裁判例の解釈や射程範囲など、会社側の立場から労働問題に取り組んでいるからこそ、反論すべき論点があります。従業員から残業代請求を受けたときは、是非とも当事務所にご相談ください。

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