問題社員から会社を守るための弁護士ができるサポートとは?
問題社員対応の概要
職場の雰囲気を乱したり、周囲のモチベーションを下げるふるまいをする問題社員の存在は、近時、多くの企業経営において大きな悩みごととなっています。問題社員の対応ができないままでいると、優秀な人材が離職するきっかけになったり、企業のブランドイメージまで損なわれるなど、最終的には会社全体の生産性や企業価値そのものが低下してしまうことさえあります。そのため、できるだけ早期に状況を見極めて、必要に応じた適切な対策を講じることが必要不可欠です。しかし、経営者にとって望ましくないふるまいをするというだけで、その従業員を問題社員と決めつけてはなりません。
問題社員が問題社員であるのは、決められたルールを守らないことで、企業にとって害悪をもたらすからです。そもそもそのルール自体が定まっていなければ、その社員の行動を問題であるといえる根拠がありません。そのため、問題社員の行動を実際に「問題」であるとして対処するためには、まずもって就業規則や労働契約の内容を十分に整備してルールを明確にしておく必要があります。
そして、そうして定めたルールは、ただ存在するだけでは意味がなく、実際に機能するものでなければなりません。その上で、もし一見してこのルールに違反している行動があったとしても、その社員がどういった理由で問題行動に至っているのかを客観的に分析し、単なるコミュニケーション不足や指示の行き違いによる誤解なのか、それとも故意にルールを無視しているのかを見分けることで、適切な対応を検討することになります。
企業が被るダメージが深刻化しやすい理由について
問題社員による問題行動は、経営者が気づくころには、すでに根深い状態になっているということが少なくありません。というのも、特定の社員による問題行動があったとしても、業務を円滑に進めることを優先させようと、他の社員がフォローすることで、その問題行動自体が表面化しないことがよくあるからです。
そうして表面的には業務が滞っていないとしても、それは他の社員が我慢をして対応しているだけなので、もし管理者が異変に気づいたならば、すぐに対処をしなければ、いずれ優秀な人材の方が会社を見限ってしまい、組織全体に悪影響が波及して、気づいたときには大きな損失につながる危険があります。そこで慌てて対応をするため、問題社員に対して急に厳しい対応をしてしまうと、不当解雇やハラスメントの主張などを受け、法的紛争に巻き込まれるリスクも高まりやすくなるのです。
早期対策の重要性について
問題社員が問題社員であることは、それ自体が気づきにくい場合もありますが、ひとたびその問題性に気づいたならば、アプローチを後回しにすることは絶対にあってはなりません。問題社員の多くは、自分が問題社員であるとはまったく考えておらず、「いずれ自分から気づいて改善してくれるであろう」などという期待を持つことは無意味です。経営者が問題社員への対応を後回しにすればするほど、現場ではトラブルが蓄積して従業員全体の心理的な負担が増すばかりで、ひいては会社に対する信頼を失ってしまうという結果につながります。
企業としては、問題社員の問題行動は、けして見過ごすことなく、その社員に対して、社内のルールに照らして間違った行動をしているということを公式に注意指導しなければなりません。そのような問題社員には、即時に退場願いたいところですが、わが国の労働法制は、即時に解雇することもやむを得ないといえるだけの問題社員であることの証明ができなければ、一足跳びでの解雇はなかなか認めません。
たとえ問題社員であったとしても、みずから改善する機会を十分すぎるほど与え、それでもなお改善がなされなかったということを証拠をそえて説明することができなければ、解雇という方法で解決すること自体が法律によって制限されているのです。この手順から外れることなく対応を行うためには、早期に企業側の立場から専門的に労働問題へ対処することができる弁護士の支援を受けることが最も有用です。
問題社員対応の種類
問題社員と呼ばれる従業員が示す行動には多様なパターンがあり、それぞれの特性や背景を理解したうえで、適切な対策を講じることが重要です。およそ職場に害をなす問題社員による問題行動といっても、分析してみれば、違った要因や経緯が隠れています。
そのため、問題社員の行為がどのような性質を持ち、どの程度組織に悪影響を及ぼしているのかをまず見極めることが大切です。もしこうした分析を欠いたまま、とにかく厳しい対処をすればよいなどというアプローチをすると、事態は改善するどころか、より深刻なトラブルや法的リスクを引き起こす危険性をはらんでいます。
業務命令に従わない社員への対応を強化するための視点
雇用主は社員に対して、業務上必要な業務命令を発することができます。この業務上の必要性は、客観的に説明が可能で、かつ、合理的なものであるとともに、これに従うべきことが社員にとっても社会通念上相当であることが裏付けられなければなりません。こうした裏付けがないにもかかわらず、単に業務命令に違反したからという理由だけで、厳しい対処をとってしまうと、むしろ会社側の対応の方が問題であったという評価を受けかねません。
まずその業務命令が就業規則などの会社のルールに根拠を持つものであるのか、またこれに従わないことが業務にどれほど支障を及ぼすのか、雇用契約上、それに従うべきことが社会通念上相当といえるかなど、業務命令の正当性とこれに従わないことが問題であるといえるだけの十分な根拠を備えなければなりません。
ハラスメント申告があった事案に対する視点
ある社員がハラスメント行為に及んでいるという申告があった場合、会社にはこれを調査して対応する義務があります。そして実際にハラスメントないしその従業員の行動によって就労環境が害されると認められる場合には、これを是正するための必要な措置を速やかに講じなければなりません。しかし、ハラスメントの申告があったからといって、実際にハラスメントがあったといえるとは限りません。
ハラスメント事案については、まず事実関係の調査をしっかりと行い、会社として、ハラスメントがあったのかなかったのかをジャッジすることが必要不可欠です。その結果、どのような措置を講ずべきかは、当然、ハラスメントがあったのかなかったのかの違いによって変わってきます。もし、ハラスメントがあったと認定した場合には、徹底した対応を行うべきことがいわれていますが、だからといって直ちに対象者を解雇しても良いとしないのが、わが国の労働法制の考え方です。ハラスメント事案があった場合に求められるのは、あくまでも就労環境の改善であり、対象者に罰を科すことそのものではないからです。ここでも対応を誤ると、無用な法的紛争に巻き込まれることになりかねません。
コミュニケーションに問題がある社員への対応のための視点
コミュニケーション能力に課題を抱える社員は、メンタル面にハンディキャップを抱えていることが少なくありません。単に社内ルールを理解できていないというだけであれば、研修プログラムやメンター制度を活用してフォローをするということが有用に機能することもありますが、そもそもメンタル面でコミュニケーション自体が不得手な社員に対しては、これらの方法は効果がありません。
それにもかかわらず、コミュニケーションの技法面にのみ頼った対策を講じることは、問題の解決どころか悪化を招くのみです。コミュニケーションは、当人の能力の問題としてだけでなく、メンタル面での問題も隠れていないか、産業医と連携をとることにより、見極めることが必要です。
不正行為や背任行為を行う社員への対応を強化するための視点
会社の信用や経営基盤を揺るがす重大な違反が確認された場合には、証拠の確保や信用回復のための速やかな対策を講じるため、弁護士との連携を最優先に行うべきです。最近では、SNSなどで他の社員や会社そのものを誹謗中傷するケースもあり、これらも企業イメージの低下や取引先からの信用喪失を招くリスクが高まるものとして、不正行為や背信行為の一つとして捉える必要があります。
もっとも、転職情報サイトや企業の口コミなどについては、根拠のない情報の流布だけでなく、会社自身も改善課題としてとらえなければならないことがらも含まれています。近時では、公益通報制度が整えられつつあり、たとえ会社が主観的には不都合であると考える情報であっても、それを隠すこと自体が、会社の信用失墜に繋がることもあります。ここでは、会社が現にいわれなき被害を受けているのか、それとも会社にとっては不都合な行動であるものの、むしろ会社が襟を正さなければならないことがらなのかを切り分けて、適切な対応をすることが必要不可欠です。
問題社員の種類を正しく見立てること、そしてその社員による行動が、本当に「問題」行動といえるかどうかを見極めることが、会社を守るために適正かつ迅速な対応を行えるようにする第一歩です。企業の指針や就業規則、労務管理の専門家の意見などをフルに活用しながら、課題ごとに道筋を外れることなく解消していく姿勢がトラブルの拡大防止に直結します。社員個々の事情をきめ細かく把握することで、不必要に厳しい処分を下すリスクを抑えつつ、組織全体を健全に保つことが期待できます。
▼関連記事はこちら▼
問題社員の対応の際の弁護士の役割
問題社員への対処を進めるうえで、法的リスクを最小限にとどめるためには、弁護士の専門知識と経験が極めて有用です。企業は自社の状況や業務内容に精通している反面、労働法や民法、場合によっては刑事面の知識まで総合的に把握して対応することは容易ではありません。特に、解雇や懲戒など、労働法制によって規制がなされている手続きに踏み切る場合には、就業規則や各種の関連法規に適合したプロセスを踏まなければ、逆に企業側が不当解雇や不法行為に及んだものとして法律上の責任を問われる危険があります。
弁護士がサポートできる書類や手続きについて
その社員の行動が法的にも問題行動と問えるかどうかの判断や、問題社員の類型と会社による対応段階別に当人に対して交付すべき文書、口頭注意や懲戒処分の手続や記録方法、いよいよ解雇や懲戒に及ぶ場合の方法など、多岐にわたる書類や手続のリーガルチェックを行うのが弁護士の役割のひとつです。企業が独自に作成した書類や経験のない中で行った手続では、法的には思わぬ不備があることもめずらしくなく、そうした不備があるがため、本来、社員側に問題があるにもかかわらず、会社側の対応が誤りであったなどと判断されてしまうことさえもあります。そうなってしまうと、後々トラブルが深刻化することとなるため、早めに専門家へ相談して伴走的にサポートを受けることでリスクを軽減することができます。
不当解雇として訴えられるリスクを減らす方法
わが国の労働法制は、解雇をしなければならないほどの問題行動があったことの十分な裏付けと、注意指導を行っても当人に改善する見込みがないということの証拠が伴わなければ、容易に解雇を認めないという立場をとっています。そのためには、一足跳びの解雇ではなく、段階的な指導や本人への説明を十分に果たしていなければならず、現にとられた方法や、これからとるべき方法によって足りているかを確認しながら、適式なプロセスを踏むことが求められます。弁護士は法的根拠と証拠の整理を手伝い、企業が正当な措置を行っていると示すための戦略を提供します。
問題社員とのトラブルが訴訟に発展する可能性を見据えた対応
問題社員と法的紛争となり、労働審判や裁判手続に入ると、企業だけでこれに対応することは現実問題として極めて困難です。特に労働分野には、専門的な法的論点が山積みであり、弁護士の中でも労働問題に注力している弁護士のサポートを受けなければ、最新の議論に対応できないことさえあります。特に問題社員は、みずからが問題社員であるとはまったく認識しないままで会社と紛争状態に突入することがめずらしくなく、会社側の立場から弁護士が初期から関わることで、必要な証拠を適切に収集しておくことが重要です。そして最終的にも、早期解決の観点から、和解や示談など、企業にとって最適な落としどころを見つけることもスムーズです。
経営者や管理部門が受けられる利点について
社員の働き方は改革期を迎えており、労働法制も細かい改正が毎年のように繰り返されています。そのため企業は、法改正がある都度、就業規則の改訂や研修プログラムの見直しなど、中長期的な対策に迫られており、ここに不備があれば、問題社員とのトラブルの種になるかねず、かつ、問題社員側から不備を追及されることになります。企業の立場からの労務に注力している弁護士が継続的に関与していれば、こうしたことがらへのアップトゥーデートな対策についてもアドバイスを受けられるため、企業のコンプライアンス対応とリスク管理を同時に行うことが可能です。
問題社員対応は人事部や管理職に大きな精神的負荷がかかりやすい分野である一方、本業そのものとは距離のある分野であることから、企業が内製のみで対応することはかえって非効率的であるといえます。ここに弁護士のアドバイスを得ることができれば、専門的知見を伴った上で、客観的かつスムーズに問題解決へと導く道を切り拓くことができます。特にハラスメントや不正行為など、もしそういう出来事があれば、企業の対策が問われる分野で、そもそもその切り分け自体が困難であるという場面では、早期に専門家へ相談しておくことで企業を守るだけでなく、職場環境の改善にもつなげやすくなります。
▼関連記事はこちら▼
退職勧奨を拒否した労働者に対して退職を説得することは許されるか?
当事務所でサポートできること
問題社員対応は、企業が抱えるリスクの中でも特にデリケートな領域であり、対応を誤るとさらなるトラブルを招きかねません。当事務所では、長年にわたり企業法務や労働問題に関する実績を積んだ弁護士が、問題社員の対処に苦慮している経営者の皆さまを全力でサポートいたします。単なる法的アドバイスだけにとどまらず、組織構造や業務フローなどにも配慮した柔軟な提案を行うことを大切にしています。
法的見地からのリスクの洗い出しと改善案の提示
就業規則や労働契約書を精査し、どの部分が曖昧なままになっているか、懲戒手続きの段階が適切に定義されているかを細かくチェックします。不足が見つかった場合には速やかに修正を行い、問題社員への対応において企業側の法的根拠を明確にするお手伝いをいたします。
解雇や懲戒処分の手続きに関する総合的サポート
最終的に解雇という重い判断を下さざるを得ない場合でも、不当解雇と見なされないための段階的な指導や書類作成など、多くのステップをしっかりと踏むことが重要です。当事務所では企業の状況をヒアリングしたうえで、就業規則に基づいた正しい手続きを案内し、万一トラブルが訴訟に発展しても企業側の適正性を主張できるよう裏づけを整えます。
▼関連記事はこちら▼
今後のリスクマネジメント強化に向けたフォロー
問題社員の対応が完了したとしても、それで終わりではありません。社内で同様のトラブルが再発しにくいよう、就業規則のさらなる見直しや研修制度の強化など、長期的な視点に立ったアドバイスも行います。経営者とともに新たなリスクマネジメントプランを考案し、再発防止に取り組む姿勢が当事務所の強みです。
問題社員の存在にお悩みの経営者の方が抱えている状況は、企業ごとに異なるものです。当事務所では丁寧なヒアリングを通じて、最善の解決策を探りながら円滑な問題解消を目指してまいります。専門家の視点からリスクを見極め、必要なアクションを迅速に進めることで、組織の健全性を取り戻すお手伝いをいたします。問題社員に振り回されることなく、企業として本来のミッションに集中できる環境を構築するためにも、ぜひ一度ご相談ください。初回のお問い合わせも含め、どのようなご相談でも真摯に対応いたしますので、お気軽に当事務所までご連絡いただければ幸いです。
法律相談のご予約はお電話で

土日祝:応相談