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能力不足・パフォーマンスが低い問題社員対応のポイント

能力不足・パフォーマンスが低い問題社員対応のポイント

能力不足・パフォーマンスが低い問題社員への対応について弁護士が解説します

人を採用するのは難しい

一度でも人事労務問題で困った経験があれば、誰もが口をそろえて「人を採用するのは難しい」と言います。
これから採用面接に挑もうという求職者用のノウハウは、様々な形で共有されています。
そのため、真剣に就職活動に取り組んでいる人であれば、面接の時点では誰もが「それなり」の対応をできてしまいます。したがって、書類選考や面接段階で「良くない人材」をふるい落とすということは、現実的ではない方法といえます。

それだけでなく、書類選考時おいて、前職の経歴が華々しかったり、有名大学を卒業しているなど、何か「これはいい」と思ってしまう特徴点が気になりはじめると、それ以外のネガティブな点が見えにくくなり、全体的に高評価を与えがちになってしまうというのが人の心理です。
良い人だと思って採用したのに、思ったほどのパフォーマンスを発揮してくれない」であるとか、「即戦力を期待したのに新入社員並の能力しかない」であるとか、「こんなはずではなかった」というミスマッチは、どちらかというと採用する側に「見る目がない」ことが原因であることも少なくありません。

とはいえ、ほんの数枚の書類とわずか数回の短時間での面談で、その人が会社にとって有用な人材であるかどうか、完璧に分析しきることは不可能です。
しかも、募集をすれば、いくらでも応募があるような企業はそう多くはなく、選びたくても選べないというのが多くの企業の実情でしょう。ミスマッチは事故と同じようなもので、注意をしていればある程度は避けられるけれども、そういう注意をする余裕がない場合や、唐突に生じる「もらい事故」のように、絶対に遭遇しないというわけにはいきません。

ローパフォーマーには「自覚」がない

悩んでいる社員ローパフォーマーの従業員は、会社側からしてみれば、能力不足が目立って仕方がなく、ついつい「誰が見ても明らかだ」と思いがちです。
しかし、問題の従業員には、自分の能力不足に自覚がないことがほとんどであり、どうかすれば「自分ほど仕事ができる人材はいない」とさえ思っている者も少なくありません。

会社側の評価と従業員自身の認識とが完全に正反対になるのはなぜでしょうか。それは、会社が従業員に対して「こうあってほしい」と考えている従業員としての理想像が、問題の従業員との間で共通認識になっていないことが、一番大きな原因です。

会社が考えている従業員の理想像は、長期的には会社の考える企業理念への共感と実践であり、短期的にはその理念の実現に向けて、質においても量においても、十分な仕事を行うことです。
従業員の能力不足は、特に後者の観点から問題となりがちですが、会社において、前者の観点が従業員に向けて明確に示されていない場合、何をめざして、どこまでのことをすれば良いのかという指標が明らかではありません。
こういう状況下では、会社が「こうあってほしい」という希望をいくら抱いていたとしても、従業員からすれば、そもそも会社が「何を望んでいるのかわからない」ということになります。

会社が明確に従業員の理想像を示さなくとも、これまでの間、多くの企業では特に問題は表面化してきませんでした。なぜならかつての日本社会には、一様に「横並び意識」を持ち、周囲に合わせて波風を立てないことを善しとする風潮があり、飛び抜けて有能でないけれども、周囲と比べて平均以下であってはならないという意識が、従業員の中にも自然と根付いていたためです。

ところが現代社会はそうではありません。格差が広がり、成果が強く求められる中では、周囲と比べてどうかではなく、自分自身が実力を発揮できなければ、生き残ることができない世の中となりました。周囲がどうかではなく、自分がどうありたいか、どうあるべきかが価値観の中心となった現代社会では、どうしても自己評価が中心となりがちです。

ある従業員の働きぶりについて、会社として評価できないという事態に直面したときは、会社の評価と従業員の自己認識との間に食い違いがあるかもしれないということを念頭に置いた対応が必要です。

能力不足・パフォーマンスの低さは見えにくい

会社が従業員に対して給料を支払うのは、それに見合う働きをしたからに他なりません。それゆえ、能力不足であったり、ローパフォーマーであったりする従業員に対して、会社としては、今の給料は仕事ぶりに見合わず高すぎると考えたり、さらには辞めてもらいたいとさえ思うこともあるでしょう。判例上も、能力不足やパフォーマンスの低さが解雇の理由となり得ること自体は否定されていません。

しかし、当の従業員の自己評価が高く、「自分ほど仕事ができる人材はいない」と思っているような場合、会社から能力不足やパフォーマンスの低さを指摘しても、まず聞く耳自体を持ちません。それどころか、給料が安すぎるであるとか、仕事量が多すぎるなど、ここでも会社の評価と真逆の反論がなされることとなります。

会社としては、この従業員の能力不足やパフォーマンスの低さを身に染みて経験しているわけですから、たとえば会社が従業員を解雇したとして、裁判所に訴え出たとしても、十分に反論できると思っておられる例が多いです。ところが、そう簡単には話しは進みません。

裁判例上、能力不足やパフォーマンスの低さを理由とした解雇が有効と認められるためには、
① 労働契約上、その労働者に求められている職務能力の内容はどの程度のものか
② 会社のいう能力不足等が、その労働契約の継続を期待できないほど重大か
③ 会社側がその従業員に改善矯正を促し,努力反省の機会を与えたのに改善がされなかったか
④ 今後の指導による改善可能性の見込みがないのか
といった要素が総合的に考慮されることが一般的です。

そもそも問題としている「能力」や「仕事ぶり」の水準は、最初の契約時に明らかにしていたでしょうか。普通は契約書に必要となる能力や仕事ぶりを明記することなどありません。また、まがいなりにも今まで一応仕事をしてきたわけですから、全く仕事ができないというのも極端に過ぎます。その上、もし今まで黙って見守ってきた、というようなことでは、当の従業員にとっては寝耳に水のこととなり、到底、受け入れてもらえません。

どれだけ会社が従業員の能力不足やパフォーマンスの低さがはっきりしていると思っていても、裁判所にまで持ち込まれたときには、それを裁判所なりの価値観に合うよう、立証しなければ、会社の主張は認められないというのが現実です。

能力不足・ローパフォーマー従業員への法的対応

手を握り合っている社員多くの会社では、何らかの形で働きぶりが賃金に反映される仕組みがとられており、従業員の能力やパフォーマンスを評価の対象とするタイミングがあります。会社が働きぶりについて疑問視している従業員に対しては、こうした評価の際に、これをきちんと反映した査定を行うことが必要です。

もっとも、個別の労働契約や就業規則において、働きぶりを査定して賃金に反映するという仕組みが構築されていなければ、従業員の意に反して、一度決めた賃金を減額改訂すること自体が認められません。
そういう賃金体系は、それ自体を見直す必要がありますが、少なくとも、働きぶりを問題だと考えているにもかかわらず、何のコメントもなしに賃金だけが上がっていくとあっては、従業員自身、会社から高評価を受けていると思っても無理からぬところです。

能力不足やパフォーマンスが低い従業員に対しては、現状の働きぶりが会社にとって好ましくないものであることを明確に意思表示した上で、改善指導することが重要です。
しかも、その従業員自体には、能力不足等の自覚がない場合を想定しておく必要があり、働きぶりの問題性を指摘する場合には、単に会社が好ましくないと思っているという主観的な理由付けではなく、客観的に何が足りていないのか、いつ、どこで、どのようなことがあり、その結果、会社にとってどういう害悪が生じたかを具体的な根拠とともに示すことが必要です。

この改善指導のうち、その従業員の能力不足等によって、会社にとってどういう害悪が生じたかという点を明らかにすることは、裁判例にいう、労働契約を維持することができないほど重大な能力不足であることを根拠づけるために是非とも押さえておかなければなりません。
裏を返せば、会社にとって好ましい働きぶりではないけれども、そのために会社の業務に支障が生じたわけでもないというのであれば、はたしてその従業員を解雇しなければならないほどなのか、裁判所の観点からすると疑問視されてしまうということになります。

問題社員対応へのサポートについて

能力不足やパフォーマンスが低い従業員は、自分自身の仕事ぶりが評価されていないことの自覚がない場合が多く、会社が厳しい対応をとった場合には、強く反発される例がよくあります。こうした従業員を問題社員として対応する前、まず会社の方が、その従業員の能力不足等により、どういう害悪を被っているのか、冷静に分析することが必要です。

その上で、裁判例の傾向をふまえ、まずは問題状況の改善に努めるように指導し、その際には、会社が主観的に好ましくないと思っているだけではなく、客観的かつ具体的な根拠で、その従業員の能力不足等により、会社に害悪が生じていることを示すことが重要です。

こうした指導は、一回で効果が現れるものではなく、状況に応じて繰り返すことが必要であることも少なくありません。どのようなタイミングで、どういった内容の指導を行うべきかについて、当事務所でサポートさせていただきますので、是非ともご用命ください。

京都総合法律事務所に寄せられるご相談例

京都総合法律事務所では能力不足社員に関して以下のようなご相談に対応が可能です。

  • 能力不足の従業員について解雇を含めた対応を検討したい
  • パフォーマンスが伴わない従業員の待遇を見直したい
  • 特定の従業員にやめてもらいたいが、解雇ではなく円満に退職してもらいたい
  • 能力に見合った給与体系に改めたい
  • 仕事もないのに居残っていた従業員から残業代請求を受けて困っている
  • 注意や指導をするとパワハラだといわれないか心配
  • 欠勤や遅刻が多い社員の対応に困っている
  • 休職と復職を繰り返してほとんど実働していない社員の対応に悩んでいる
  • 会社として問題社員と思っている従業員から逆に訴えられてしまった
  • 能力不足の社員がでてきた際に対応できるよう就業規則を見直したい

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