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従業員に対する損害賠償請求

会社から従業員へ損害賠償請求をする場合

契約の不履行や事故などで他人に損害を与えてしまった場合、被害を受けた人が損害賠償請求をできることは当然のことです。これは、従業員が会社に損害を与えてしまった場合でも、基本的には同じことです。
この前提で、新たしく採用する従業員からは、身元保証書を提出させて、万が一、会社に損害を与えたときのために、保証人を立てるということがよく行われています。

しかし会社は、従業員に働いてもらうことによって、利益を上げています。万が一の事態が生じたときでも、その損害は全部従業員に負担させることができるのであれば、極論すると、会社は利益だけを得て、リスクは負わないという評価を受けかねないともいえます。

そのため、従業員が会社の業務を行う上で、会社に対して損害を与えたとしても、その全部の賠償を従業員に求めることはできないというのが裁判例の考え方です。その範囲は業務の内容や、従業員の落ち度の程度によって左右されるので一律ではありませんが、半分まで負担させることが認められる例は希です。従業員の落ち度がそれほど大きくない事案では、損害の3分の1あるいは4分の1程度まで制限されることも少なくありません。

この場合、足りない部分を身元保証人に請求しようと考えたいところですが、身元保証人の責任はあくまでも従業員の責任の保証ですから、従業員の責任が制限されているのに、それを超えて責任を追及することはできません。
それだけでなく、身元保証人の責任は、会社が従業員の監督を怠っていなかったか、身元保証をした経緯や事情などを考慮して、さらにその範囲が限定されるのが一般的です。そのため、身元保証書は金銭保証としての実効性は大きくありません。

損害賠償だからといって給料からの一方的な天引きは禁物

会社が従業員に対して損害賠償請求権を有している場合、給料から少しずつでも返して欲しいところです。しかし、先走って、従業員の同意を得ないまま、一方的に給料から天引きすることは、判例上、古くから明確に否定されていますので認められません(最判昭和31年11月2日、最判昭和36年5月31日)。

もっとも、会社から一方的ではなく、従業員との合意の上で、給料と損害賠償とを相殺すること自体は否定されていません。そのため、従業員との間で合意書を取り交わして、月々の給料から損害賠償分を回収していくという方法があり得ます。

ただし、やはり裁判例上、この合意は従業員が自由な意思に基づいて行ったと認められる合理的な理由が客観的に存するものでなければならないとされています(最判平成2年11月26日)。そもそも給料は従業員にとって生活の糧ですから、あまりに多額を相殺されることに応じるとは考えにくいところですし、額がそれほど多くなくとも、一度拒絶していたにもかかわらず、会社側から強く説得されたなどという事情があれば、自由な意思に基づいて合意したとは認められない可能性が高くなるので注意が必要です。

このように、従業員に対する損害賠償は、その全額を当然に請求できるわけではなく、また責任の範囲が定まったとしても、給料から一方的に天引きすることはできません。そのため、効率よく回収をはかるためには、従業員との間での話し合いにより、自由な意思による合理的な範囲での合意を得ることがポイントです。どこまでの請求をしていくべきか、どのような方法で回収をしていくかは、裁判例の傾向をふまえて慎重な対応をする必要があります。当事務所では、従業員への損害賠償請求についてのサポートをさせていただきますので、是非ともご用命ください。

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