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パワハラ防止法が2022年4月から中小企業も義務化。もし社内でパワハラが起きたら企業はどのように対応すればよいのか弁護士が解説します

パワハラ防止法が2022年4月から中小企業も義務化。もし社内でパワハラが起きたら企業はどのように対応すればよいのか弁護士が解説します

目次

パワハラ防止法をふまえた企業の対応策

2020年6月1日、いわゆる「パワハラ防止法」が施行されました。当面の間は、大企業から義務付けが行われ、中小企業にもしばらくは努力義務が課されるにとどまっていましたが、2022年4月1日からはいよいよ、パワハラ防止がすべての雇用主に課される法律上の義務となります。

企業の業績を向上させるためには、何よりも従業員にとって良好な職場環境を維持構築することが重要です。特にパワハラは、従業員の士気を下げるだけでなく、企業のイメージを損ねることにもなりかねず、今日の社会では、経営的観点からも防止しなければならないものといえます。

ここではパワハラ防止法が何を禁止しており、企業に対してどのような対応を求めているのか、その内容をふまえた対応策について解説をしていきます

どのような行為がパワハラ防止法の規制の対象になるのか

2017年4月に厚生労働省が公表した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によれば、会社で働く従業員のうち、3割以上にも及ぶ人たちが、実際にパワハラを受けたり、職場内でパワハラが行われていると感じているとの回答を寄せたとされています。

従業員により良いパフォーマンスを発揮してもらうためには、時として厳しい注意指導を行ったり、意にそわない業務命令を発しなければならないこともあります。これらがすべてパワハラとして禁止されるわけではないのはもちろんのことです。どこまでが必要な注意指導であり、どこからがパワハラになってしまうかの線引きは難しいところです。

パワハラにあたる行為

パワハラにあたる行為とは、
①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること又は就業環境を害すること
であるとされています。特に次の6つの類型にあてはまる行為は、パワハラ防止法によって規制の対象となりますので十分に注意が必要です。

身体的な攻撃を行うこと

上司が部下に対して、殴打、足蹴りをするなどの暴力を加えることは、業務上の必要性があるとは認められないため、パワハラにあたります。身体に命中しなくても、物を投げつけるなど、身体に向けられた攻撃も同様にパワハラとなります。

また、身体に向けられていなくても、机を繰り返して叩いたり、ゴミ箱を蹴り飛ばすなど、その行為を見聞きすることで苦痛が生じるような行為は、程度によっては、同じく身体的な攻撃として、パワハラにあたります。

これに対して、同僚間の喧嘩により暴力沙汰となったような場合は、業務と関係ないものである限り、パワハラとは位置づけられません。

精神的な攻撃を行うこと

上司が部下に対して、「無能」「給料泥棒」「ゴミ」など、人格を否定するような発言をすることは、パワハラの対象となります。昭和の時代には、そういう人格否定の発言を受けた従業員が悔しさをバネにして奮起を期待する、などという考え方もありましたが、それからすでに40年近くも時代が経過した現代社会では、そのような考え方が正当化されることはありません。

もっとも、期待された業績が上がらない従業員や、勤務成績が不良な従業員に対し、業務改善の指導を行うことは、必要なことであり、この指導を受けたからといって、精神的に辛い思いをしたとしても、それをパワハラというのは筋違いです。また、遅刻や遅刻や服装の乱れがあったり、社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られたことで、再三注意してもそれが改善されない部下に対して上司が強く注意をすることも、社会常識として当然に許されることといえます。

これらの違いは、従業員の人間性を直接に攻撃しているのか、従業員の問題行動という行為に着目して注意指導しているかという点にあります。実際に問題行動に及んでいる従業員に対して注意指導を行うことは、当然に許されるべきことです。しかし、その方法を誤ると、問題行動に及んだ従業員がパワハラ被害者となり、注意指導をしたつもりの雇用主が加害者となるということにも至りかねないので、パワハラ防止法の下での注意指導のあり方は、特に慎重な対応が求められます。

人間関係からの切り離し

会社や上司の意向に沿わない社員に対して、仕事から外したり、長期間にわたり、別室に隔離したり、あるいは自宅研修させたりすることなどがこれにあたります。職場の秩序を乱すことを理由に、自宅謹慎を命じるということは、場合によっては必要なこともありますが、具体的にどのような害悪が職場に生じたかを客観的な証拠で明らかにできないと、パワハラに当たることがありますので注意が必要です。

人員配置の都合で、他の従業員が複数で業務にあたっている中で、特定の従業員だけ一人で業務に当たらせなければならない場合や、新入社員を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施することなど、業務上の必要性がある場合には、パワハラには当たりません。ここでも具体的な業務の必要性を客観的な証拠で明らかにできるかどうかがポイントになります。

過大な要求

上司が部下に対して、長期間にわたって、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずることは、過大な要求としてパワハラに当たります。ハードワークの期間が一時的なものではなく、恒常的なものとなっていたり(おおむね3ヵ月以上となったときには要注意です)、そもそも勤務との関係性が乏しい業務を命じているような場合は、パワハラにあたる可能性が極めて高いといえます。

従業員のスキルアップのためには、今できる仕事よりも少し高いレベルの業務を任せなければならないこともあります。したがって、従業員が過酷だと感じたからといって、すべてがパワハラにあたるわけではありません。しかし、ハードワークが原因で従業員が身体を壊したり、精神を病んでしまうと、安全配慮義務違反として雇用主の責任が問われますので、パワハラに当たらないからといって放置は禁物です。

過小な要求

特定の従業員が自主退職をすることをねらって、もともと担っていた業務やこれまでの配置の実情に比較して、見合わない仕事をさせることは、パワハラに当たります。たとえば管理職であった従業員に対して、業務上の必要性を伴わないで、受付や清掃業務に配置転換する場合などが、要注意の事例となります。

もっとも、職種や配置を限定して雇用された者でない限り、様々な部署へ配置転換がなされること自体は、経営上の都合によって許容されるものといえます。適材適所への配置として、従業員が希望していたとしても、経営判断によってこれと異なる部署に配置することはあり得ますので、希望に適わない職種を割り当てられたからといって、そのすべてがパワハラにあたるというわけではありません。

個の侵害

従業員は、勤務時間中について、職務に専念しなければならないので、その間、職務と関係しないことをしないよう、注意指導をすること自体は当然に必要なことといえます。しかし、勤務時間外のプライベートな時間にまで、業務上必要ないことがらで連絡をとったり、勤務時間中であっても、勤務と関係のないプライベートな事柄に踏み込んだり、思想・信条等を理由にした他の従業員と差別した取り扱いをすることは、パワハラに当たるといえます。

しかし、特定の従業員への配慮を目的として、従業員個別の事情に応じた特別な対応を行うことは、むしろ事業主の義務とされる場合があり得ます。他の従業員への配慮や会社秩序維持のために、特定の従業員の意に沿わない対応をせざるを得ない場合もあり得ますが、その目的を客観的に合理的な資料を伴って明らかにできなかったり、今日の社会通念に照らして相当と認められないものと評価された場合には、パワハラに当たることもありますので、こういった対応には慎重な検討が必要不可欠です。

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パワハラ防止法とはどのような法律なのか

いわゆる「パワハラ防止法」は、正式には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」という法律であり、「改正労働施策総合推進法」とも呼ばれています。

法律自体は、2020年6月1日より施行されていますが、中小企業では当面の間、この法律に基づく義務が努力目標とされており、今後のパワハラ防止態勢を確立するためのいわば準備期間とされていました。

しかし、その準備期間もまもなく終わろうとしており、2022年4月1日からは、企業の規模や法人・個人事業主とを問わず、すべての雇用主が、パワハラ防止法の定めに従って、対応をすることが法律上の義務となります。

パワハラ防止法により、雇用主に義務付けられていることがらは、次のとおりです。

パワハラに対する事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

・職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
・行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

パワハラ防止の取り組みは、事業主自身がパワハラをしないという強い決意を持つことはもちろん、職場内でのパワハラを見逃さず、厳しい姿勢で臨むことを宣言することから始まります。

そのために、従業員全員へ配布したり、社内の掲示板で掲示する方法で、何がパワハラにあたるのかを明確にして、パワハラを行ってはならないことを宣言することが義務付けられています。

そして万が一、パワハラが発生した際には、懲戒処分等で厳しく対処することも義務付けられています。従業員に対して懲戒処分を行うためには、就業規則等に明確な根拠が必要となりますので、これにあわせた就業規則の改定も必要となります。

パワハラについての相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

・相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
・相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

パワハラ防止法では、従業員がパワハラ被害を受けたと考えた際に相談できる窓口を設けて従業員に周知することが義務付けられています。一般的には、人事部門の責任者や特定の役員を担当者として指定して、いつでも相談して良いことを入社時に案内したり、社内に常時掲示する方法で周知する取り組みがなされています。

またこの相談窓口担当者は、実際にパワハラの有無を調査して、もしパワハラがあったと判断した際には、行為者に対する懲戒処分や必要な措置を行うことを会社に対して働きかけることができる権限を有していなければなりません。

職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応をすること

・事実関係を迅速かつ正確に確認すること
・速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
・事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
・再発防止に向けた措置を講ずること

パワハラについての相談を受けたり、社内でのパワハラ問題が発生している疑いに気づいたときは放置せず、事実関係を迅速かつ正確に確認することが義務付けられました。これにより雇用主は、パワハラ問題へ実際に対応することが法的に義務付けられているということになります。

事実確認の結果、パワハラがあったと判断せざるを得ないときは、速やかに被害者に対するケアを行い、行為者に対しては懲戒処分等を含めた厳正な対処を行うことが義務付けられています。それだけでなく、再発防止に向けた措置も講じる必要がありますので、問題が起きた際には、その一件限りの出来事として済まさないことが肝心です。

なお、事実確認の結果、パワハラがなかったと判断した場合にも、パワハラの相談をしてきた従業員に対して説明をしたり、必要に応じて、行為者に対しても注意指導をするなどの措置を行うことも義務付けられています。したがって、パワハラがなかったとする判断は、特に相談をしてきた従業員に十分説明できる根拠をもって事実確認をした上で行わなければならないということに注意が必要です。

そのほか併せて講ずべき措置

・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
・相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

パワハラ問題についての相談や事実確認の調査にあたっては、相談者はもちろん、そのような行為に及んだとされている従業員や関係者のプライバシーを保護しなければなりません。そのために、相談については匿名でも構わないと取り扱ったり、事実確認を他の従業員に知れ渡らない場所や方法で行うなどの対応が必要です。

パワハラについての相談をしたことで、行為者や関係者からさらにパワハラが行われるようなことがあっては本末転倒です。パワハラ防止法では、相談したこと等を理由として、不利益な取り扱いをすることが禁止されています。

またここでは相談したことそれ自体を理由とする不利益な取り扱いが禁止されていますので、たとえば事実確認の結果、パワハラがなかったと判断された場合に、事実と異なる申告をした等という理由で、相談してきた従業員を注意指導や懲戒の対象とすることも禁止されているので、十分に注意してください。

パワハラ防止法に違反すると何が起こるか

パワハラ防止法によって、雇用主には様々な義務が課されることとなりました。これに違反した場合、どのような罰則があるのかということが気になりますが、今のところ、パワハラ防止のための対応義務が果たせていないことに対する罰則は定められていません。

しかし、パワハラを受けたと考える従業員は、労働局や労働基準監督署へ相談を行える態勢が整えられており、その結果、雇用主において、パワハラ防止法に基づく対応義務が果たせていないと判断がなされた際には、行政指導が行われます。この指導は、助言、指導または勧告という方法で行われますが、勧告を受けてもなお、これに従わない場合、企業名が公表されることとなっています。

それだけでなく、実際に企業内でパワハラが起きてしまったときには、パワハラ行為をした従業員はもちろん、雇用主もその使用者として、被害を受けた従業員に対して、損害賠償義務を負うことがあります。特にパワハラ防止法が施行された後は、定められた対応義務を果たせていないこと自体が会社の落ち度であると評価されてしまうので、こうした対応不備はそのまま、損害賠償リスクにつながります。

過去にはこのような多額の損害賠償義務が生じた例もあります。

① A病院事件(さいたま地判平成16年9月24日)

A病院で勤務していた男性准看護師であったXさんは、先輩Yから3年近くにわたって、休日の私用での呼び出し、職員旅行での多額の金銭負担や飲酒の強要、仕事中に度々「死ねよ」と発言されたり、「殺す」とメールを受けたりするなど、様々ないじめ行為を受け続け、これを苦にして自殺してしまいました。裁判所は、Xさんの遺族からの損害賠償請求を受け、先輩Yに対して1000万円の慰謝料の支払いを命ずると共に、A病院に対しても、そのうち500万円について、Yと連帯して賠償責任を負担するよう命じました。

この事案でのYからXさんに対するいじめは、ここに記載した内容にとどまらず、かなり執拗なものであって、それ自体がパワハラにあたることは疑う余地はありません。XさんはA病院も含めて、誰にも相談することもできずに自殺してしまいました。

A病院からすれば、「相談してくれていれば、対処することもできた」との主張があり得るところですが、裁判所としては、A病院においてこうしたいじめやパワハラ防止のための特段の措置を講じていなかったことや、YからXさんに対するいじめが3年近くも続いていたこと、その中には職員旅行や職場内でも発生したものも含まれていることから、A病院において、気づかなかったこと自体が問題であるという考え方を示しました。

この裁判例は、パワハラ防止法ができる前のものですが、これからは雇用主にパワハラ防止のための具体的な対応義務が明確な法的義務となりますので、雇用主としては、パワハラが起きたことを知らなかったでは済まされず、むしろより厳しい判断がなされる可能性があります。

② Bホテル事件(東京高判平成16年2月27日)

Bホテルの従業員であった甲さんは、上司である乙から、お酒が飲めない体質であるにもかかわらず、酒席での飲酒を強要される、深夜の時間帯に、業務上の対応を責める留守番電話やメールを繰り返して送られる、夏季休暇中に急な業務に対応できなかったことをとらえて、「ぶっ殺すぞ」と罵られるなどされたことで精神を病んでしまい、そのまま回復することができず、自然退職となってしまいました。甲さんからの損害賠償の請求に対し、裁判所は乙とBホテルに対して、甲さんへ連帯して150万円の慰謝料を支払うよう命じました。

こちらの事例は、A病院のものとは異なり、Bホテルの業務時間外で行われているものがほとんどで、Bホテルにおいては、本当に甲さんと乙とのやりとりを知らなかったのかもしれません。しかし雇用主は、従業員が職務に関連して行ったパワハラ行為については、それを知っていようと知っていまいと、使用者責任として、その従業員と共に、損害賠償責任を負わなければなりません。パワハラは、雇用主の知らないところでも発生しないよう、日ごろから予防に努めていなければならないという一例といえます。

③ Cファンド事件(東京地判平成22年7月27日)

消費者金融Cファンドの従業員であったVさん(実際の事件では、ほかにも2名の人が原告となっています)は、上司であるKから、仕事ぶりが不十分であるとして、「馬鹿野郎」「給料泥棒」などと叱責を受けたり、「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」という念書を書かされたりなどしていました。こうした仕打ちにつき、裁判所はKとCファンドに対し、慰謝料として連帯して40万円を支払うよう命じました。

この事案では、KがVさん以外の従業員にも、暴言や暴行を加えていたというより悪い事情がありましたが、Vさんとの関係では、この発言自体がパワハラとして、40万円の慰謝料支払義務の根拠となっている点がポイントです。これは特異な例ではなく、人格非難にあたる発言があれば、それだけでパワハラとして慰謝料請求の対象となることは、裁判例上、ごく当たり前のこととされています。

パワハラ防止法施行に向けて企業が行うべき施策

2022年4月から、すべての雇用主がパワハラ防止法に基づく義務を課されることとなります。これらに対応することは、そのまま職場のパワハラ防止や万が一にパワハラが発生してしまった際の対策として有効に機能します。

雇用主が従業員の意に沿わない対応をしたからといって、その全てがパワハラとなるわけではありません。従業員に対して必要な注意指導を適切に行うことは、パワハラ防止法が施行されたからといって、差し控えるべきではありません。どこまでが業務上必要な指導にあたり、どこからがパワハラとして違法になるのか、また従業員からパワハラの相談があったときにはどのように対応するのか、パワハラ防止法施行に向けて、次のような施策を講じることがポイントとなります。

管理職を中心とした社内研修の実施

パワハラは職場内で優位な立場にある者によって行われるものです。職制の上限関係上は上司であっても、在籍年数が長かったり、年齢差があるなど、職場内での力関係が逆転している場合には、部下から上司に対するパワハラというものもあり得ます。しかし多くの場合、パワハラは上司から部下に対して行われるので、まずは管理職を中心とした、パワハラについての理解を深める研修を実施することが重要です。

その前提として、企業のトップ自身が、パワハラはあってはならないという強い意識を持たなければなりません。雇用主自身がパワハラを繰り返しているようでは、有効な対策を講じることはできません。パワハラの行為者は、その行為がパワハラに当たるという理解がないことが多く、むしろ厳しい指導によって人材が伸びていくとの信念で行動に及んでいることが珍しくありません。

こうした今日の社会では通用し得ない信念に基づいて行われているパワハラ行為は、一朝一夕に是正していくことは難しいものです。パワハラ防止は、何よりもトップからの強い決意とメッセージが必要です。トップ自身にパワハラ防止の意識が乏しい企業にこそ、角度を変えて複数回にわたってパワハラ防止研修を継続的に行い、徐々に意識改革を進めていくことが必要不可欠です。

相談窓口の設置

従業員がパワハラ被害にあったと考えた際に、相談をすることができる窓口を置くことは、パワハラ防止法によってすべての雇用主の義務となりました。この相談窓口では、実際に相談にあたるだけでなく、事実関係を調査して、必要な措置を講じるために率先して行動することが求められます。

従業員がパワハラとして申告した行為を調査した結果、双方の言い分に食い違いが生じるということがよくあります。こうした事実認定に迷いが生じる場合に備え、パワハラの有無についての判断は、相談窓口担当者だけでなく、複数名のメンバーで調査結果を検討して判断するという方法が考えられます。相談窓口は、初動の対応を行い、今後の対策を率先してリードする職責を担うことが必要ですが、事実認定そのものについては、社内に委員会を設けるなど、担当者にすべての責務を負わせない方法で対応することが有用です。

パワハラの有無についての事実認定を行う部門を委員会方式で設けた場合、そのメンバーにどのような関係者を関与させるかは、企業の実情によって様々です。従業員代表を関与させる方法もありますが、相談者や行為者のプライバシー保護の観点からは、慎重になる必要があります。

当事務所のパワハラ相談窓口の外部委託業務について

当事務所ではパワハラ相談窓口の外部委託業務を承っております。
具体的な業務内容は次のとおりです。

①一次対応(外部相談窓口の開設)

【業務内容】
「ハラスメント外部相談窓口」として、当事務所の連絡先を社内にて周知していただき、相談があった場合、内容をお聴きし、相談者の意向を踏まえ、貴社ご担当者様にご報告させていただきます。

②二次対応(オプション)

【業務内容】
相談内容を踏まえ、事案に応じてハラスメント調査や社内対応(対象者の処分やハラスメント防止体制の見直し等)をバックアップさせていただきます。

外部相談窓口は月額3万円(税別)から、最短で即日開設できます。
詳細はこちらからお問い合わせください。

社内規定の作成

パワハラが発生した場合、行為者に対して懲戒処分等を含めた厳正な対処を行うよう社内規定を整備することは、パワハラ防止法上の義務となっています。最近では、就業規則のひな形自体が、パワハラを懲戒処分の対象としている例が多いので、多くの企業では、すでに形式的にはパワハラに厳正な対処を行う前提が整っているといえます。

問題は、どのような手順でそこまでの処置を講じていくかという点にあります。社内規定は整っていても、実際に懲戒処分を下すべきか、また懲戒処分を下すべきであるとして、どの程度の処分とすべきか、判断に迷うという例は少なくありません。そもそも、問題となっている行為がパワハラにあたるのかどうかを確定すること自体が困難ということもあり得ます。

社内規定は単に作成するだけではなく、実際に問題が発生した際に、どのように運用していくかまでもが想定されて、はじめて有効に機能します。そのためには、パワハラ問題が発生した際の手続マニュアルをあわせて整備するとともに、実際の案件に対しても、要所ごとに対応方法のアドバイスを適切に受ける態勢を整えておくことが重要です。

パワハラが発覚した場合の対応態勢の確立

相談窓口を設けることにより、職場内でのパワハラ問題を吸い上げるための仕組みを作ることができます。相談が寄せられた場合はもちろんのこと、積極的な相談にまでは至らないものの、パワハラの疑いがある事案が発覚された際には、被害者からの申告を待つまでもなく、対応を進めていくことが重要です。

① 関係者からの事情聴取

パワハラが発覚した際には、関係者から聴取して、事実関係の確認を行うことから始めます。この際、パワハラを受けている疑いがある従業員のプライバシーには特に配慮する必要があります。そのため、案件を公にしたくないという強い希望があった際には、行為者から事実を確認するに際しても、慎重な配慮が必要です。

② パワハラ該当性の有無の判断

事実関係を確認した後は、パワハラがあったといえるかどうか、会社としての判断を速やかに行わなければなりません。相談担当者だけでは判断に迷うことも少なくないので、パワハラ該当性の有無の判断は、複数名で相談して行うことが考えられます。

③ 必要な措置の実施

パワハラに該当する行為があったとしたときには、間を置かずに行為者に対して懲戒処分等の措置を行うことが必要です。パワハラに該当する行為があったとは認められない場合には、相談をしてきた従業員に理由を説明して理解を得ることが重要です。

これらの対応については、特に相談をしてきた従業員から不満が述べられることがあるかもしれません。不服申立に応じることは義務ではありませんが、もし不服申立を認めるのであれば、就業規則等の社内規定により、不服申立の要件を明確に定めておく必要があります。安易に再調査に応じることは、際限なく再調査を余儀なくされたり、当初の判断の信頼がゆらいでしまう可能性がありますので、慎重な対応が必要です。

パワハラ防止法への対応は当事務所へご相談ください

職場内でのパワハラは、いざ発生してしまうと、従業員の士気を大幅に削いでしまい、十分なパフォーマンスを発揮させることができなくなってしまいます。ましてパワハラが蔓延しているような職場では、従業員が定着をせず、中長期的な成長戦略に大きな影響が生じてしまいます。パワハラ対策の不備は、企業の成長のための大きなデメリットに他なりません。

パワハラ防止法への対応として、就業規則を整備するなどの仕組み作りが必要不可欠であることはもちろんのことです。しかし、せっかく作った仕組みも、十分に機能するものでなければ意味がありません。

当事務所では、パワハラ防止法への対応対策のため、社内規定の整備についてご提案申し上げることはもちろん、各種の研修の実施のほか、実際にパワハラの相談があった際のアドバイスや事実認定のサポートにも努めさせていただいております。一例として、

・管理職を対象としたパワハラ研修の実施により、注意指導とパワハラの区別に理解が得られたとの感想を受けた例
・パワハラ相談対応マニュアルを作成することにより、対応担当者が行うべきことが明確になった例
・パワハラの該当性に疑義があった例について、アドバイスをしたことにより、パワハラの該当性は否定されたものの、必要な処置を別途講じることで相談者の納得が得られた例
・パワハラに該当し得る行為があった事例について、従業員側にも問題があったことから、相応の解決金の支払いには応じつつ、合意退職により解決した例

などの対応例があります。

パワハラは、一旦発生してしまった際には、雇用主が問題を把握していた場合はもちろん、把握していなかった場合でも、対応態勢自体に不備があることそれ自体が、法的責任の根拠となります。特に2022年4月のパワハラ防止法施行以後は、パワハラ防止態勢の確立は明確な法的義務となります。パワハラ防止法への対応態勢の確立はもちろん、今後の運用のあり方や、現在問題となっている案件への対応方法など、パワハラ対策にお悩みの企業・雇用主の皆さまにおかれましては、是非とも当事務所にご相談ください。

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