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会社の経営に関する事項は団体交渉の対象となるのか

団体交渉は何のために行われるべきか

会社と従業員との労使関係は、本来、個別に契約する雇用契約によってその条件が定まります。

雇う側からすると、雇い入れた当時の労働条件のまま、長い間働き続けてくれれば、とても好都合です。しかし従業員側からすると、それでは生活がままなりません。給料をあげてほしいと思うこともあるでしょうし、働き過ぎなので残業時間を減らして欲しいという要望もあるかもしれません。

こうした要望を持つ従業員が、自分一人で会社に対して要求していくとなると、かなりハードルが高いことでしょう。そのため法律は、従業員が「労働組合」という組織を結成して、一致団結して会社と労働条件の改善をめぐって交渉することを、特に労働者の権利として保障しています。

このように団体交渉は、労働者としての従業員の待遇改善を目的として行われることが本来のあり方です。したがって、団体交渉の対象となる事項は、賃金、労働時間、懲戒、解雇といった、労働条件や労働者の待遇及び労使関係についてのルールに関することがらとなることが予定されています。

経営に関する事項は団体交渉の対象となるのか

ところで、会社の経営方針や営業戦略など、会社をどのように運営していくかという経営に関する事項は、誰が決めることでしょうか。これはいうまでもなく、社長をはじめとする経営陣が決定すべきことでしょう。

会社の社風によっては、従業員側からのボトムアップによる提案を広く受け入れて、経営方針に取り入れておられることもあるでしょう。しかし、その場合でも最終的な判断は、経営陣が行っているはずです。そして、そういう社風をとるかどうかも、やはり経営陣が決定すべきことがらです。

従業員が会社の経営方針に意見を持つこと自体は、必ずしも悪いことではないといえます。しかし、これが単なる意見の域を超えて「要求」にまで至ると、行きすぎです。このように考えたとき、たとえば会社の経営方針や営業戦略そのものを団体交渉の議題とすることは、本質から外れているということになります。

もっとも、一口に経営方針といっても、事業規模を縮小したり、営業を休止したりするなど、従業員の労働条件を直接左右しかねないことがらもあります。会社の経営に関する事項であっても、組合員の労働条件に関わることがらであるとして、労働組合が団体交渉を行うことは、当然のこととして認められています。

団体交渉に応じる義務がある場合の見極めが重要

労働組合による団体交渉の目的は、組合員である従業員の労働条件についての要求を達成するところにあります。こうした目的による団体交渉の申し入れがあったとき、雇い主には交渉の席につく法律上の義務が課されます。こういった事項を義務的交渉事項といいます。

しかし、経営方針や営業戦略などの経営に関する事項については、組合員である従業員の労働条件に直接関わらない限り、団体交渉の議題とすること自体、原則的に不適切といえます。ただし、会社側からあえて団体交渉に応じることは否定されていません。会社側において、団体交渉に応じるかどうかの自由が認められいる事項は、任意的交渉事項といいます。

任意的交渉事項とはいえ、ひとたび団体交渉の議題としてしまうと、それ以後は誠実に交渉にあたらなければなりません。もし、新たに労働組合が結成され、当初に団体交渉とすべき事項についての協定を結ぶよう求められた際には、本来、任意的交渉事項となるはずのことがらを幅広く交渉事項としてしまわないよう、十分な注意が必要です。

労働組合とうまく付き合っていくためには、最初にボタンの掛け違いがないことがとても重要です。はじめて労働組合が結成された際には、是非とも当事務所にご相談ください。

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