京都弁護士による
企業労務相談

京都弁護士会所属・京都市役所前駅16番出口より徒歩3分
075-256-2560
平日:9:00~17:30 土日祝:応相談
HOME/ コラム/ 問題社員への注意指導は口頭ではなく、このような「書面」で行うことが必要不可欠です

問題社員への注意指導は口頭ではなく、このような「書面」で行うことが必要不可欠です

問題社員への注意指導は口頭ではなく、このような「書面」で行うことが必要不可欠です

「いつか気づいてくれるはず」の「いつか」は「いつまでも」訪れません

パフォーマンスが低い、協調性がない、問題行動を繰り返すなど、「問題社員」へどのように対応したら良いかは、経営者が持っておられる大きなお悩みの一つと思います。経営者からすると、このような問題社員は、「きちんと働いていない」のですから、給料を下げたり、懲戒処分の対象としたり、あるいは解雇の対象となることも当然ではないか、とお考えではないでしょうか。しかし、労働法の世界では、そのような理解は通用しません。

問題社員の何が問題かというと、労働の「質」が経営者の求める水準に達していないという点だといえます。しかし、我が国の労働基準法が給料の対象としているのは、原則的に労働「時間」であって、労働の「質」ではありません。そのため、まがいなりにも労働「時間」内の勤務があれば、一応、「仕事はしている」という評価からの出発となってしまいます。こうした考え方は、当の問題社員自身にとても強く表れがちです。驚くべきことですが、経営者が問題社員であると思っている社員自身は、「自分ほど頑張って仕事をしている者はいない」と信じて疑わないというのが実情なのです。

我が国では、自分自身で向上心を持って、改めるべきところは改めるのが美徳として考えられがちです。こういう意識は、経営者の皆さまは、より強くお持ちのことと思いますので、たとえ問題社員であっても、「いつかは自分で気づいて良くなってくれるはず」とお考えではないでしょうか。

しかし、問題社員は「自分はよく頑張っている」と思い込んでいるので、反省や改善をしなければならないなどとは、全く思っておらず、何もしないでも、いつかは経営者が思いえがくまっとうな社員になる、などということは、およそあり得ません。

「口頭注意」は「証拠」にならないので「書面」での注意と指導が必要不可欠です

問題社員の態度が改まらないとあっては、多かれ少なかれ、業務に影響が生じます。「いつかは改めてくれるだろう」という考え方が通用しない以上、「このように改めるように」と注意指導することが必要不可欠であることは、当然のことといえます。人それぞれの個性にもよりますが、これまで意識をしていなかったことでも、注意を受けてはじめて気がついた、ということもあり得ます。そういう場合もあるので、最初の注意は口頭でも良いといえるでしょう。しかし、一度注意したことが改まらないとあっては、そもそも注意自体が伝わっていない可能性があり、どうかすると後日に「そんなことは注意など受けたことがない」などと言われてしまうことさえあります。

問題社員は、極まれば極まるほど、「自分は悪くない」という思考に至りがちです。そのため、何が悪くて、どのようにすべきかを具体的に示さなければ、およそ反省ということにはつながりません。そして、「自分は悪くない」との思いが強くなると、注意を受けたことそれ自体を否定したいという心理に至ることも珍しくないといえます。何度も何度も注意しても態度が改まらない問題社員は、最終的には解雇せざるを得ないというところに行き着くことになります。しかし、解雇が正当として認められるハードルはとても高く、法律的には解雇をするのに「客観的に合理的な理由」が伴うことと「社会通念上相当」であることの両方がそろっていなければ、容易に「無効」との判断が下ります。

問題社員との関係でこの要件をみたとき、どれだけ大きなルール違反をしたのか、それによりどのような実害が生じたのか、そして改善する機会はもうないのか、ということが良く問われます。仮に裁判となった場合、これらの事情をすべて「立証」しなければなりません。口頭注意だけだと、そういう注意をしたという事実を立証することができません。それゆえ、注意は「書面」で行うことが必要不可欠だということなるのです。

注意指導はこのような書面で行うことがポイントです

では、問題社員への注意指導の書面としては、どのようなものを用いるべきでしょうか。究極的には解雇も考えなければならないとなれば、その解雇が「客観的に合理的な理由」を伴い、「社会通念上相当」であることの立証ができるための書面でなければなりません。

①ルール違反の事実を明確に記載すること

大前提として、問題社員の何が問題であるのかが明確になっていなければなりません。解雇を視野にいれた場合、それは「客観的」に「合理的」でなければならないので、感覚の問題として「態度が悪い」であるとか、価値観の問題として「社風に合わない」というような理由では、この点を十分にクリアーできるとは言いにくいです。

ここでは会社のルールに違反していることが示されるべきであり、なおかつ、いつ、どこで、誰が、どのようにして、何をしたかを特定して記載することがポイントです。その大前提として、会社のルールなるものが就業規則その他の規程として明らかになっていることが必要不可欠です。そういうルールがない場合は、問題社員の何が「問題」なのか、根拠がないといわれても仕方のないことだといえます。

②違反によってどのような害悪が生じたかを特定すること

「悪法もまた法なり」などという言い回しがよく使われますが、これ自体、歴史的にゆがんで伝わっている表現であり、「悪いルール」を根拠にしたところで、解雇の正当性は全く認められるものではありません。問題社員の行動が問題であるのは、ルールに違反しているからであることには相違ありませんが、どうあっても実害を伴わないルール違反は、そもそもそういったルールに意味があるのか、という問題をはらみます。問題社員の問題性は、ルールに違反した結果、会社に実害をもたらした、あるいは実害が生じかねない状態にあったという点にこそ存しますので、書面では単にルールに反しただけではなく、どういう実害につながったのかを明記することが重要です。

③改善を求める内容とすること

常識的に考えれば、ルールに違反して、実害まで生じたとあっては、同じような行動を繰り返さないよう反省するのは当たり前のことです。しかし、問題社員が極まると「自分は悪くない」という考えに至りがちなので、注意だけで改善につながるとは限らない実情があります。そして驚くべきことに、「改善を求められなかったから、特に何もしなかった」という言い分が、事情によっては通用してしまうことさえもあるのです。

そのため、注意の対象となった行動は、会社として見過ごしがたいことであり、今後、同様のことがないことを明示することはもちろん、今回の問題行動に至った原因を特定した上で、その原因となった事実そのものを改めるよう記載することがポイントになります。したがって、注意を行う書面は常に、単なる「注意書」ではなく「注意指導書」であるべきだということになります。

④受領欄を設けること

こうして作成をした注意指導書は、きちんと交付しなければ意味がありません。注意しなければならないのは、実際に交付をしているにもかかわらず、「受け取っていない」という弁解がされてしまうことに対してです。そのような弁解が通用してしまうと、注意指導を行ったという事実自体の立証が失敗してしまい、最悪の場合、そういう問題行動があったことそれ自体も「なかったこと」にされてしまうことさえあり得ます。

そうならないようにするためには、注意指導書の末尾に受領欄を設けて、本人に署名をさせるということが有効です。ただし、徹底的に問題のある社員は、その署名さえも拒否することがあり得ます。そのような場合には、署名を拒否した状況を報告書にして、社内文書として残しておくという方法も考えられますので、必ず交付をした事実を記録に残すようにしてください。

問題社員への対応はプロジェクト的に行うことが必要です

問題社員の問題社員たる所以は、会社のルールに従わないで、実害をもたらし、かつ、どうあっても改善しないというところにあります。多くの実例では、経営者の好き嫌いで判断しているであるとか、大した違反に及んでいないとか、まだ改善の可能性があったなどとして、会社による対応の正当性が伝わらない場合が見られます。

こうした結果に至らないようにするためには、ポイントを押さえた注意指導書の作成と、粘り強い対応が必要不可欠です。これを社内の特定の担当者だけに行わせることは無理難題であるといわざるを得ません。

当事務所では、問題社員への対応について、注意指導書の作成方法はもとより、前提となる就業規則の見直しや継続的な対応方法についてサポートさせていただくためのプランを用意させていただいております。問題社員への対応にお悩みの際には、是非、当事務所へご相談ください。

無料ダウンロードレポート提供中

下記ページにて、注意指導書のひな型を無料で提供しております。

ご希望される方は下記入力フォームへご記入ください。ご入力後、Word形式にてダウンロード可能ページに移動します。

ぜひこちらをご活用いただき、適切な対応にお役立て下さい。


法律相談のご予約はお電話で

075-256-2560
平日:9:00~17:30 
土日祝:応相談
ご相談の流れ