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「それってセクハラです!」対策について弁護士がポイントを解説します

「それってセクハラです!」対策について弁護士がポイントを解説します

 

「冗談だった」が通用しない、それがセクハラです

従業員が気持ちよく働くためには、職場の雰囲気が良いということがとても重要です。そのためには、経営者や管理職などの役職者がユーモアに富んだ対応をするということも効果的であるといえます。しかし、自分自身がそういう対応をする立場になったとき、その言動は本当にユーモアとして受け止めてもらえるものか、冷静に考えてみなければなりません。

たとえば、テレビやネットで面白おかしく配信されているバラエティコンテンツを見て、「こんなものの何が面白いのか」と不快になった経験はないでしょうか。同じように、私たちが「面白い」と思ってしている言動も、他の従業員にとっては不快以外の何ものでもないということも十分にあり得るのです。

一般的に男性は性的なことがらを「面白い」と思って扱いがちですが、多くの女性はそうは思いません。「面白がって笑っている」「軽い対応でかわしている」などと思っても、それは上司や目上の立場の人に対して遠慮しているだけのことなのです。

もともと職場では、性的なことがらをあえて取り扱うこと自体、全く必要性のないことです。職場で性的言動をすることは、他の従業員を不快に思わせる余計なことであり、たとえ本人がユーモアだと思っていたとしても、単にそのセンスが疑われるだけで、百害あって一利なしといわざるをえません。

「相手がどう思うか」はセクハラかどうかの重要な要素です

職場でのセクシャルハラスメントは、就労に関連して行われる従業員の意に反する性的な言動によって、従業員が労働条件について不利益を受けたり(対価型セクハラ)、就業環境が害されたりすること(環境型セクハラ)として定義づけられています。

狭い意味での「職場」で行われる言動だけでなく、取引先への行き帰りや、打ち合わせをするための会食の場での言動も問題となり得ますし、こういった場所に関わりを有する者であれば、取引先、顧客、患者、学校の生徒など、広く当事者となり得ることに注意しなければなりません。

・上司が部下に対して性的関係を要求したことを拒否されたので、配置転換や解雇をする。
・ある従業員が他の従業員の身体にことさらに度々触れて、精神的苦痛を与える。
・職場内において、性的な意味を含む言葉を頻繁に使う。
・従業員の個性ではなく性別のみによって役割を分担させようとする。
・性的志向を背景にして、業務外でのやりとりを繰り返す。
・職場内に性的な表現物を持ち込む。

こういった言動はどれも、好ましく思わない従業員が必ずいると思うべきことがらです。従業員が好ましく思っていない性的言動は、その意に反して行われたものに他なりませんので、セクハラとして非難されることは当然のことといえます。

セクハラに当たるか当たらないかは、その言動が性的な意味合いを伴うものである以上、言動をしている当人がどういうつもりであったかではなく、そういう言動を目の当たりにしたり、その対象とされた相手方がどのように感じたかが基準となって判断されます。

セクハラ防止は事業主の法律上の義務です

セクハラ行為をしてはならないことは、他人を傷つけてはいけないという、とても基本的な倫理の一つです。それゆえ、セクハラ行為の「禁止」そのものは、もはやあえて言うまでもない社会人としての常識であって、当たり前の道徳であるといえます。

法律は一人一人がセクハラ行為をしてはならないことは、もはや当然のこととしてあえて言うまでもないことを前提にして、事業主に対して、次のような防止措置をとることを義務付けています。

事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること

セクハラ防止のためには、事業所全体の方針として、セクハラがあってはならないことを明確にすることが必要不可欠です。そのためには、トップが率先してセクハラ防止の模範を示さなければなりません。

企業のトップがセクハラに無頓着であることは、その企業自体が倫理観に欠けているということを意味します。そのような企業は、今日の厳しい競争社会の中で生き残ることができないといえます。セクハラ防止は、法律で義務付けられたからではなく、当たり前の企業道徳として、経営者が当然に対策を講じなければならないことがらです。

相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること

職場内でのセクハラは、上司が部下に対してであったり、先輩が後輩に対してであるように、職場内での優越的な立場を背景にして行われることが少なくありません。そのため、実際にセクハラに直面して、精神的な苦痛を受けていたとしても、我慢を重ねてなかなか声を上げられないということも多くあります。

セクハラ行為はそれ自体が非難されるべきものですから、被害を受けた者が耐え忍ばないといけないというのは不条理です。このようなことが常態化している職場では、従業員が定着してくれなかったり、優秀な人材を確保すること自体が難しくなります。

セクハラに関する問題について、相談や苦情を受け止め、適切に対応するための体制を整備することは、よりよい人材を確保して活用することができるようにするという、企業にとっての重要課題に直結する課題といえます。

相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者及び行為者に対して適正に対処するとともに、再発防止に向けた措置を講ずること

相談や苦情を受け付ける体制を整えたとしても、実効的な対応が行えないとあっては、全く意味をなしません。したがって、セクハラの相談を受けた場合には、具体的にどういうセクションがどのように行動をするのかという方策を定めて、現にそのように行動することが必要不可欠となります。

もっとも、たとえセクハラにあたるかどうかが、性的な言動を受けた側の気持ちの問題であるとしても、実際にそのような言動があったのかどうかとは別問題です。相談を受けた際には、中立的な立場で客観的な観点から、まずそのような事実があったかどうかの判断を慎重に行わなければなりません。

というのも、ひとたびセクハラ行為があったと認定した際には、そうした言動を行った者に対して、懲戒処分等の厳しい対処を行うことが求められるためです。こうした厳しい処分を行うためには、客観的に合理的な根拠を伴っていなければならず、またそのような処分を行うことが社会通念に照らしても相当であるといえなければなりません。

被害があったという申告には真剣に向き合わなければなりませんが、申告があったことということそれだけで、客観的に合理的な根拠なしに、特定の従業員を加害者扱いしたり、まして懲戒処分等に書すると、今度はその従業員との関係で法的な問題を生じてしまいます。セクハラの相談に対しては、迅速に対応することが必要ですが、何よりもそうした事実があったのかなかったのか、事実関係を正確に確認しなければなりません。

相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

セクハラは、内容によっては、被害を受けた従業員が秘密にしたいことがらを含む場合があって当然といえます。そのため、相談者のプライバシーは厳重に保護されなければなりませんし、もし匿名で対応して欲しいとの希望があるならば、可能な限り、これに応じることも必要となります。

このことは被害を受けたと申告してきた従業員だけでなく、加害者として特定された従業員や、事実確認に協力した従業員についても同じく当てはまります。加害者として特定された従業員に対し、セクハラ行為をしたことを理由にして懲戒処分とした場合であっても、これを名指しで全社的に公開したり、取引先等に通知したりすることは、通常は合理的な必要性が認められないので、差し控えるべきです。

なお、セクハラ被害に遭ったとの申告があったものの、調査の結果、客観的にはそのような事実が認められなかったり、申告された事実は認められたものの、それが法的にはセクシャルハラスメントには当たらない、という場合もあり得ます。しかし、そのことだけで相談をした従業員を懲戒処分等の不利益な取り扱いをすることは原則的に認められません。

セクハラ対策に関する問題でお悩みの際は

当事務所では、セクハラ対策のための体制を整えるため、社内研修をはじめ、社内規程の整備や相談対応にあたる方のサポートを承っております。

もっとも、セクハラの申告があった場合に最も悩ましいのは、事実の調査をどのようにして行い、その結果に対して、当事者に対し、どのような対処をするのかという具体的な運用面です。当事務所では、セクハラについての相談を受けての調査結果をふまえての事実認定はもちろん、ご要望があれば調査委員会等のメンバーとなって、事業を営む皆さまと共に、具体的な事案への対応もサポートさせていただいています。

事実調査の結果、セクハラの事実があったと認められ、加害者とされた従業員に対して懲戒処分等をした際、被害者とされた従業員から際限なく対応を求められたり、加害者とされた従業員からも事実無根であるとの主張を受けることもあり得ます。逆に、セクハラの事実がなかったと判断した場合に、相談をしていた従業員から、納得がいかないとの理由で再調査等を求められることもあります。これらについて、どのように対応していくべきかについても、当事務所においてサポートさせていただくことが可能です。

セクハラに関する対応体制の整備はもちろんのこと、具体的な案件について、事実認定の場面のほか、相談者や加害者とされた従業員との間でトラブルになってしまったというお悩みなど、企業の立場から労務問題に注力をしている当事務所へ是非ともご相談ください。

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