京都弁護士による
企業労務相談

京都弁護士会所属・京都市役所前駅16番出口より徒歩3分
075-256-2560
平日:9:00~17:30 土日祝:応相談
HOME/ コラム/ 解雇とは違う退職勧奨という方法

解雇とは違う退職勧奨という方法

「こんなはずではなかった」から始まる解雇・退職勧奨の問題

どのような会社でも、より良い人材に長く定着してもらいたいという思いは共通の願いであり、この人こそはと思ったからこそ採用したという経緯があったはずです。しかし、中堅企業の多くでは、感覚的な採用が行われているためか、実際に働いてもらったところ、「こんなはずではなかった」というミスマッチが起きることも少なくありません。

せっかく縁を得た人材ですから、たとえミスマッチが起きていても、長い時間をかけてのOJTを通じて経験を重ねてもらえば、あるいは将来的に大化けすることもあるかもしれません。しかし、一人の従業員を育てるためだけにリソースを割り当てられるほどの余裕がある企業はごく限られています。

会社の立場からすると、期待に満たないパフォーマンスしか発揮できない従業員は、給料に見合う働きができていないとの評価に至りがちであり、いっそ退職してもらえないかと思うことも無理からぬところです。

しかし一方で、当の本人である従業員には、自分がローパフォーマーだという自覚がない場合が少なくなく、会社側から退職してもらいたいというアプローチを受けても、「どうして自分がそんなことを言われなければならないのか」という受け止め方をする例が多く見られます。

会社の立場からは、「言わなくてもわかるだろう」ということであったとしても、従業員の立場からすると「言ってもらわなければわからない」というのが実情であり、こうした意識のすれ違いがある中で解雇に及んでしまうと、高い確率でトラブルになります。

退職勧奨は従業員の理解がないと「解雇」と同じ

社長が強いリーダーシップを発揮している会社では、日常業務において、社長が発する号令が強い影響力を持っています。しかし、その感覚で社長の一存で行われた解雇は、法律上、無効となることがしばしばです。社長がどれだけその従業員の働きぶりが悪いと思っていても、「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当」であると認められない解雇は、その権利を濫用したものとして、無効とするという法律の定めがあるからです(労働契約法16条)。

解雇は会社側から雇用関係を解消することであり、法律上、そう簡単にはできないものと定められています。しかし、従業員側から雇用関係を解消する自主退職は原則的に自由です。この違いをふまえて、あえて会社側から解雇はせず、従業員側から退職するように持っていくという方法がとられる例が見受けられます。退職にあたって、従業員自身から「退職届」の提出を求めることが一般的なのは、退職があくまでも従業員が自主的に行ったものであるということを証拠として残すという意図によるものといえます。

しかし、会社が退職してもらいたいと思っているからといって、従業員も退職したいと考えているとは限らず、むしろ従業員側にしてみれば、自分が会社から厄介者扱いされていること自体、不本意である場合も少なくありません。このような場合、従業員側から率先して退職することはあり得ないので、会社側から退職を促す退職勧奨を行うことがあり得ます。

退職勧奨は、会社の考えているところを従業員に示して、従業員自身もその内容を納得した上で自主的に退職をする、という過程をとることが理想的です。ですが、退職勧奨に至らざるを得ない場合、ほとんどのケースですでに会社と従業員との間で働きぶりについての評価に大きく食い違いが生じています。このようなケースでは、従業員からすると会社の評価は不当な評価であり、到底納得できないという対応をされる可能性が高いといえます。

従業員が退職勧奨に応じない場合を想定して、強く退職を迫ったり、自主退職はしないと明確に意思表示しているのに、繰り返して退職勧奨をすることは、それ自体が不法行為となり得ます。このような方法での退職勧奨は、「勧奨」とは名ばかりで、退職の「強要」であるといわれかねず、過去の裁判例でも、かえって会社が従業員に対して損害賠償をするよう命ぜられた例が多くあります。

退職勧奨を行う場合のポイント

退職勧奨はあくまでも会社からの「勧奨」ですから、これに応じるかどうかは従業員の自由です。従業員が応じない場合には、解雇をするか、退職してもらうこと自体を断念するかのいずれかの選択が必要となります。しかし、最初から解雇ありきでの対応の場合、従業員側からすると、退職勧奨に応じなければ解雇されるので、応じざるを得ないという状況に追い込まれたと受け止められかねません。そうすると、退職勧奨と解雇とを一連の過程として運用することは、退職勧奨が退職強要と評価されかねないリスクを伴うこととなります。

退職勧奨を行う際に重要なポイントは、従業員からしても、会社の言い分がもっともであるといわざるを得ない理由を備えて行うという点にあります。そのためには、会社が退職勧奨をせざるを得なくなった問題点について、客観的かつ合理的な根拠を備えておくことが重要です。

① いつ、どこで、どのような問題があったか。
② それに対して会社がどれだけ指導をしたか。
③ それにもかかわらず改善しなかったこと。
④ 改善しなかったことによって、業務に支障が生じていること。
など、日々の積み重ねの結果、やむを得ず退職勧奨に至ったということが、客観的な資料をもって説明できる必要があります。

これらは解雇の合理性を根拠づける事情と重なり合うものであり、結局、退職勧奨は解雇をしていたとしても、法律上通用する程度の事情がなければ、リスクを伴うものであると考える必要があります。とはいえ、従業員の理解を得る機会として、強硬的な態度で行わないものであれば、有効に活用できる場合もあります。

退職勧奨は、そこに至るまでの入念な注意指導が必要であり、実際の退職勧奨時の応対方法、従業員が応じなかった場合のその後の対応方法は、従業員が何を問題として、会社の考えを受け入れなかったのかをふまえた上で、対応をすることが重要です。具体的な対応について、何をどのように行っていくべきか、当事務所がサポートさせていただきますので、是非ともご相談ください。

>>当事務所の弁護士への相談から解決までの流れ

>>弁護士費用への依頼料金についてはこちら

>>労務トラブルに強い京都総合法律事務所の「労務支援コンサルティング」についてはこちらを御覧ください

法律相談のご予約はお電話で

075-256-2560
平日:9:00~17:30 
土日祝:応相談
ご相談の流れ